このインプレッションは2013年1月に書かれたものです
タイトリストはアスリート指向ゴルファーに人気が高い。前作910シリーズに引き続き、913シリーズにもD2とD3の2機種がラインナップ。913D3の体積は前作同様445CC。D2に比べると15CC小さく、フェースの厚みは約56ミリ。ヘッド形状は前作と比較して「どこがどう変わったのか」探すのが難しいくらいに類似し、トウ側が膨らんだタイトならではの洋梨形状だ。ボディだけでなくフェースもブラック仕上げ。シャープな印象を上手く演出している。
ヘッドをポンと地面に置くとフェースが開く。プロ、上級者が好む「左に行きづらい」顔つきだ。
そして910同様、913も弾道調整機能が追加されており、ヘッドからシャフトを脱着できる。シャフトと一体になっている第1リングと、独立して回せる第2リングの組合わせ方によって、ライ角度とフェースアングルのセッティングを16通りに変えられるようになっているのだ。ヘッド後方に装着される重量調整ウエイトは、「ビス形状」から「くの字形状」にデザインが一新されている。
デザイン的には大きな変更点があまり見受けられない913シリーズだが、フェースの素材がガラリと変わった。910は鋳造フェースだったのに対して、913は鍛造フェースが採用されている。モデルチェンジでどこがどう変わったのか?さっそく試打してみた。
試打クラブは9.5度のS。シャフトは純正の「タイトリスト・ランバックス5.5」リアルロフトはノーマルポジション(A-1)で10度。フェースの向きは-3度。ヘッドを置いた時、ソールが開く方向に回転するため、計測するとオープンフェースの度合いが強い。フェースはやや面長。重心距離が長く見える顔付きだ。
シャフトはワッグルすると中間部分がやや大きめにしなる。振動数は240cpm。913D2と同じシャフトで、アスリート向けのドライバーにしては軟らかめ。長さはヒールエンド計測で、45インチ(メーカー公称値は45.25インチ)。クラブ重量は307.1グラムでバランスはD3となっている。
ヘッドスピードを落として打ってみると、弾きの良い金属音とともにボールが中弾道で飛び出した。913は鍛造フェース。910は球離れが遅い感じだったが、913は球離れがやや早い。そして、音との影響も相まってフェースの弾き感がアップしている。
球筋は軽いフェード弾道。D2に比べるとヘッドが少し返りづらく、捕まり過ぎを抑えた感じ。D2に比べると重心が少し浅く、重心アングルが小さいのが影響しているのだろう。弾道調整機能で捕まるようにセッティングすると捕まりが良くなるが、基本的には「左のミスが出づらい」ドライバーである。弾道計測すると、打ち出し角は11~13度。フェースのやや上側で捕えるとスピン量は2100~2500回転。913D2に比べるとややスピンが少ない感じだ。極端な差ではないが、D2に比べると抑えた弾道、ランが出やすい弾道が出やすいだろう。
純正シャフトの「タイトリスト・ランバックス5.5」は切り返しでは、シャフトの中間部分がグイッと大きめにしなり、ダウンからインパクトにかけてゆっくりしなり戻る。中間部分がかなり軟らかく、典型的な中調子の粘り系。スイングに中にしなりを感じ取りやすく、タイミングが取りやすい。
D2同様、D3も重心距離はそれほど短くない。D3は重心を少し浅くすることで、D2よりもヘッドの操作性が良くなっている。加えて、D2よりも少しスピンが減った弾道が打ちやすい。弾道調整機能は付いているが、基本的なヘッド挙動、ノーマルポジションでのオープンフェースの度合いが強いことを考えると、フッカーと相性が良い。
ノーマルポジション(A-1)だと9.5度表示でリアルロフトが10度。フェース角が-3度。ライ角は60度で重心アングルは25度。913D2よりも重心アングルが1.5度小さい。個体差はあるだろうが、重心が浅い分だけ重心アングルも小さくなっている。球が捕まる状態に調整すると、フェース角は-1.5度、リアルロフトは11.5度まで増える。対して、一番捕まらないスペックに調整すると、フェース角は-4度でリアルロフトは9度となる。弾道調整機能を利用してもフックフェースにはならない。個体差はあるが、フェースの向きはスクエアからオープンに調整できるタイプだと思ったほうがいい。
オリジナルシャフト(タイトリスト・ランバックスモトーレ5.5)のSの振動数は240cpm。アスリート向けにしては軟らかい設定で、中間部分のしなりを感じやすく仕上がっている。ダウンからインパクトにかけてはしなり戻るスピードが遅め。先端側がしっかりしているのでヘッドはそれほどアッパーに動かない。長さは実測値で45インチ。クラブ重量は307.1gでバランスがD3。25~55歳ぐらいの男性で、体力が平均的、もしくは平均以上と相性が良いスペックだろう。
リアルロフトはそれほど多くなくて、低スピン弾道が打ちやすい。ボールが上がりやすいタイプではないので、ロフトで見栄を張らない方がいい。ボールが上がりづらい人は9.5度よりも10.5度の方がいいだろう。ただし、捕まるポジションで使いたい人や、ボールを低く抑えたい人は9.5度、もしくは8.5度をお勧めする。
米国メーカーのドライバーだが、シャフトは日本仕様。アスリート向けにしてはソフトな仕上がりだ。Sでも硬さを感じない。Sシャフトのヘッドスピードのストライクゾーンは41~45m/sぐらいか。ちなみに913シリーズはシャフトのラインナップが豊富。USTマミヤのアッタス4U6、4U7、グラファイトデザインのツアーADGT6、GT7、三菱レイヨンのディアマナB60、B70が選べる。