iシリーズはピンのアスリート向けブランド。前作i15からほぼ2年ぶりのモデルチェンジとなったが、まず目を引くのがカラーリング。ヘッドはつや消し処理がなされたマッドブラック。白いヘッドとは違った意味で存在感を強烈にアピール。体積は同社のG20同様に460CC。だが構えると‥‥一回り以上小さく感じる。ブラック塗装の効果は絶大で、プロ、アスリートゴルファーが好む引き締まったサイズに感じる。
フェースは面長でディープ。定規で測ってみると、フェース厚は59ミリ強もある。ヘッドシェイプはバックフェースの絞り込みが強い三角形で、強いシャローバック。ソールのバックフェース側には19gものタングステンが埋め込まれており、重心を深く、そして低くする設計になっている。
フェースの向きはオープン。構えた時にフェースがやや右を向く。スライサーよりもフッカーが構えやすい顔付きだろう。長さは45インチと標準的だが、i20の特長は何と言っても重たいヘッド。ヘッド重量は200gを越えている。どこからどうみても、プロ、アスリートゴルファー向けに作られているi20。どんな球筋が出やすいのか?どんなゴルファーと相性が良いのか?試打してみた。
試打クラブは9.5度の純正Sシャフト(プロジェクトXブラック6.0)。ワッグルすると手元側が硬いのが手に伝わる。振動数は266cpm。ヘッド同様、シャフトもハードなセッティング。長さは実測で44.75インチ(ヒールエンド法計測)、クラブ重量は312gでバランスはD2。重いヘッドが装着されている割りにはバランスはそれほど重くなっていない。
試打すると、軽めのフェード弾道。見た目よりも捕まらない。G20同様、i20も重心距離はかなり長めなのだろう。ヘッドの返りが遅いのに加えて、オープンフェースなのが影響しているようだ。弾道は低スピンの放物線弾道。打ち出し角は13~14度とほどよい高さで、スピン量は2300~2700回転。ハードヒッターでも吹き上がりづらく、キャリーとランで飛距離を稼げる。スピンが多いゴルファーにはやさしく飛ばせるドライバーだ。
インパクト音は控えめでボールを包み込むような感触が手に伝わる。球離れが遅めなので、それなりに球筋を打ち分けられる。スイートエリアは見た目通り広く、アスリート向けの中ではミス対する許容範囲が広い。ただし、ヘッドが返りづらいのでフェースを開いてアウトサイド・イン軌道に打つと球を捕まえるのが難しいだろう。ボールをしっかり捕まえる技術がある人の方がイメージ通りの弾道を打ちやすいドライバーだ。
また、ヘッドが返りづらいのでクラブでチーピンや引っかけを軽減した人には、ミスに対する許容範囲が非常に広い。シャフトは振動数が示す通り、かなり硬めだ。切り返しで中間部分が小さめにクッとしなり、ややゆったりしなり戻る。ヘッドスピードが43m/s以下だと硬さを感じてタイミングが取りづらいが、45m/s以上で打つとしっかり叩ける。プロジェクトXブラックは、しなり戻りでヘッドを加速させるタイプではなく、自分でしっかり叩ける人の方が扱いやすく感じるシャフトだ。
使いこなすにはある程度のパワー、そして球を捕まえる技術が求められるが、ヘッドはスイートエリアが広くてミスに強い。そして、何よりも低スピン弾道で飛距離も稼げる。ヘッドの特性を考えると、スライサーよりもフッカーと相性が非常に良いドライバーであることは間違いない。
9.5度表示でリアルロフトは10.5度。フェースアングルは見た目通りオープンで-1.5度となっている。ライ角は59.5度と平均的。重心アングルは22.5度とやや少なめ。G20同様、i20もスペック的にはスライサーよりも典型的なフッカー向けだ。重心距離が長く、フェース角も-1.5度とオープン。実際にボールを打ってみても、ダウンからインパクトにかけてはヘッドが返りづらい特性がある。
シャフトについては、純正仕様となるプロジェクトXブラックは手元剛性が高く、トルクは普通。シャフトは硬いが適度なねじれがあるのでそれほどシビアではない。そしてトルクの影響で、振動数のわりにしなりを感じやすくなっている。長さはメーカー値が45インチで実測値が44.75インチ。クラブ重量は純正S(プロジェクトXブラック6.0)が312g。45インチ換算にすると315グラムぐらいの感じになる。25~55歳ぐらいの人で、硬めのシャフトを求める人と相性良く仕上がっている。
リアルロフトは平均的だが、低スピン弾道なの吹け上がりにくい。ボールが上がりづらい人は普段と同じか、普段よりも0.5~1度ロフトを増やした方が安定したキャリーが出るだろう。構えた時にロフトが多く見えるので、低めの弾道を打ちたい人は、普段と同じか、普段よりも0.5~1度ロフトを減らした方が構えやすいし、イメージ通りの弾道を打てる。
純正シャフトは硬めの仕上がりなので、硬さで見栄を張るのは禁物だ。シャフトのしなりを感じたい人は普段と同じか、普段よりもワンフレックス下げた方がタイミングが取りやすい。純正シャフトにはピンオリジナルのシャフト(TFC707)もラインアップされている。こちらはプロジェクトXブラックよりも若干重量が重く、そしてトルクが少なくなっている。プロジェクトXブラック6.0のストライゾーンはヘッドスピードが45~49m/sぐらいだ。