株式会社フォーティーンの創業者、竹林隆光さんが12月27日、心不全のためにご逝去されました。享年64歳です。
竹林さんと言えば、ゴルフ業界で知らない人はいないクラブデザイナーです。ゴルフクラブが感覚だけで作られていた頃から、クラブを精密分析してクラブを設計。中空アイアンを作ったり、タラコと呼ばれる元祖ユーティリティクラブを設計されてます。革新的なクラブを作ることでは、日本を代表する、いや世界を代表するクラブデザイナーです。
その一方でゴルフメディアにも精力的に登場し、ゴルフクラブのメカニズムについて紐解いていただきました。マーク金井は1989年からゴルフ業界に入りましたが、入ってそうそうに竹林さんに取材をしました。当時、アルバの編集部員でしたが、フリーに転身してからもことあるごとに高崎や吉井(どちらもフォーティーンの本社)に出向き、クラブの選び方、クラブの目利きについていろんな話をこれでもかってぐらい伺いました。2005年にマーク金井はアナライズを設立しましたが、そのきっかけを作っていただいたのも、他ならぬ竹林さんです。クラブを計測&分析する会社を設立したくなった素地を作っていただきました。
竹林さんとの出会いは本からです。ゴルフ雑誌「チョイス」で企画された記事を読んでお名前を知り、クラブに対する基礎知識を学びました。今でも、「上手なクラブ選び」(1985年刊)と「ゴルフクラブの秘密」(1987年刊)の本は手元にあります。
どちらも1980年代に書かれたもので、ドライバーのヘッドは木製のパーシモン、シャフトはカーボンシャフトが出始めの頃です。この頃はまだ重心距離、重心高、重心アングルといった重心に関する具体的な記述はありませんでしたが、これまでのクラブ本と違って物理的な記述が多々あって食い入るように読み漁りました。
竹林さんが数値を全面的に出してきたのは1990年を過ぎたくらいから、ドライバーのヘッド素材がチタンになってきはじめた頃ぐらいではないかと記憶しています。マーク金井が今でもしょっちゅう読んでるのが1995年7月号のゴルフ雑誌「チョイス」です。
ここでは、今どきのゴルフ雑誌以上にクラブヘッドの数値が細かく紹介され、数値の見方も細かく説明されています。具体的に言うと、
ヘッド重量
ヘッド体積
新重心の高さ
有効高さ率
リアルロフト
フェース厚
重心高さ
重心距離
重心深度
LD値
ヘッド厚
フェースプログレッション
重心角(重心アングル)
フェース角(フェース向き)
慣性モーメント
ここでは大ヒットした初代セイコーSヤードも紹介されており、数値的にもアマチュアに使い勝手が良いことが証明されてました。初代のSヤードはフェース角が+2.5度と超フック。スライサーにやさしい理由が数値で分かるように解説されています。そして数値でユニークなのがLD値。Lが重心距離でDが重心深度。この2つを掛け合わせたものがLD値で、LD値が大きいほど捕まりが良くて方向性が良く、しかも飛ぶ可能性が高いと解説されています。マーク金井は重心距離と重心深度の数値の差が少ない方がヘッドの挙動が安定すると解説することが多いが、それを最初に教えてくれたのが竹林さんです。
そして、時間は少し空きますが今でもクラブ選びのバイブル本として位置づけているのが「ゴルフクラブの真実」(パーゴルフ新書 2008年刊)。新書なので写真やイラストは1点も入っていません。すべて竹林さんの一人語りの本ですが、その内容はクラブの本質や概念を説明した上で、さらにクラブとはいい関係を築くとはどういうことなのかという、クラブとスイングのマッチングについても書かれています。具体的に言うと、
重心距離が長いクラブにはシャットフェース
重心距離が短いクラブにはスクエアフェース(フェースの開閉)
竹林さんは5年以上前から重心距離の違いでスイング理論は変わることを力説されています。マーク金井はそれを追従したくて、いろんなメディアで竹林さんと同じことを語っています。他にも「自分にぴったりなクラブはない」等と歯に衣着せぬ発言が多々ありました。
数えだしたらきりがありませんが、ゴルフクラブがここまで進化してこれたのは竹林さんの影響が非常に大きかったと思います。ゴルフクラブがこれからどんな風に進化するかは予測が付きませんが、少なくともヘッドの数値、重心位置に関しては竹林さんのフィロソフィーを継承していくことは間違いないと思います。
2014年もいろんなクラブが登場してくると思いますが、そろそろクラブメーカーもスイングとクラブの関係性について触れてもよい頃だと思います。どこのメーカーが最初に手を上げるかは大いに興味ありますが、もし、どこもクラブとスイングの関係性についてアナウンスしないのであれば、オイラがアナウンスします。来年もいくつかのクラブをリンクスから登場させますが、自分が設計したクラブに関しては、ヘッドのスペックをきっちり紹介しつつ、「こんなスウィングにはこのクラブが合いますよ」とアナウンスしていきます。
竹林さんがお亡くなりになられたことは非常に悲しいことですが、それと同じくらい悲しいのが‥‥
クラブによってスイングは作られ、
クラブによってスイング理論が変わる
という現実を知っているアマチュアゴルファーが少ないことです。竹林さんから何も託されていませんが、今年もオイラはクラブがスイングに及ぼす影響ついては、多くのメディアに訴えかけていきたいし、本も執筆していきます。不遜なのは重々承知してますが、それが何よりもの竹林さんへのご供養になると思っています‥‥合掌
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