マーク金井blog

2013年04月15日改めて思う‥‥日本人がマスターズに勝つための条件とは!?

2013年のマスターズトーナメントは、アダム・スコットが豪州勢としては初の優勝で幕を閉じました。雨の中、アンヘル・カブレラとのプレーオフは死闘とも呼べるもので、手に汗をかきながら、息を詰めながらテレビ観戦した人も多かったかと思います。

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GDOより転載

もちろんボクも朝5時ぐらいからテレビ観戦してました。タイガーの追い上げを期待していたのですが、パットがことごとく打ち切れない。本人もラウンド後にコメントしてましたが、オーガスタの超高速グリーンは雨が降ると途端に遅くなります。その遅さに対応できなかったことを本人は悔やんでいました。アダム・スコットも本戦中はパットが打ち切れてませんでしたが、本戦18番のバーディパット、そしてプレーオフで勝利を決めたパットも下りのラインでした。強めに打てなかったアダム・スコットに対して、ゴルフの神様は彼に少し味方したのかも知れません。

日本勢では石川遼が最終日に7つのバーディーを奪って、4アンダーの68を出しました。優勝争いに関係ない場面、ノープレッシャーのラウンドとはいえ、スコアはスコア。数字は数字。遼クンにとって自信初めての60台のスコア。この数字はきっとこれからのゴルフの支えになるでしょう。対して、4位タイに終わったタイガーは2日目に池ポチャ処理を誤っての2打罰があったとはいえ、4日間とも70以上のスコア。「最終日に65を出せば優勝できると」コメントを残していましたが、まさにその通りの結果になりました。

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GDOより転載

今年もマスターズはTV視聴者に色んなシーンを見せてくれましたが、ボクが注目したのは最終18番のティショット。カメラがティマーク付近にあるのでしょう。世界のトッププロ達のスイングを下からあおり気味に、これでもかって見せつけてくれました。そして、その連続写真的なスイングを見てみると‥‥プレーオフを戦ったアダム・スコットアンヘル・カブレラとの間には年齢以上、スイングの世代間ギャップを感じました。

アンヘル・カブレラ43歳
アダム・スコット32歳

その差は11歳ですが、カブレラは「パーシモンでゴルフを覚えた」かのようなスイングの持ち主。対して、スコットは「460CCチタンでゴルフを覚えた」かのようなスイングをしていたからです。

 

どこがどう違うのか?

それはトップの位置です。カブレラはトップでフェースがスクエアからややオープン。トップの位置でフェース面は斜め45度から正面の間ぐらいです。フェースがスクエアかオープンなトップは、パーシモンのように重心距離が短いクラブと相性が非常に良く、そしてフェースを開閉して打った方が飛びますし、方向性も安定します。かれのトップはボクがゴルフを始めた頃(30年以上前)、最高のお手本でした。

対してスコットはトップでフェースがシャット。宮里藍ちゃん同様、トップでフェースが空を指しています。シャットフェースなスイングは重心距離が長いドライバー(大型ヘッド)と相性が非常に良く、そしてフェースをシャットに使った方が飛びますし、方向性も安定します。30年前だとシャットフェースは悪いスイングと評価されていましたが、重心距離が長いクラブが当たり前な今では、これが最高のお手本です。

このトップのフェース向きの違いは持ち球の違いにもあります。カブレラはピンの大型ヘッドを使っていますが、ドライバーの弾道は基本フェード。ピンの大型ヘッドは重心距離が長い。オープンフェースだとボールを捕まえたり、ドローを打つのが難しくなります。カブレラはそれを本能的に察知したのでしょう。彼は捕まらないドライバーを無理に捕まえようとせず、フェードを打っています。プレーオフの2ホールは10番ホール。ここはほぼ直角ってぐらい左にドッグレッグしていて、ドライバーの弾道がフェードだと攻略ルートが非常に狭くなる。彼はドライバーや3Wでフェードを打つと攻めきれないとジャッジし、ロングアイアンでティショットを打ちました。

対して、フェースをシャットに使うスコットは3Wでティショットを打ってフェアウェイをキープ。ちなみにスコットの場合、ドライバーに比べると、3Wやアイアンを打つ時はシャットの度合いが少し弱まっています。ドライバーに比べると3Wはアイアンはヘッドが小さく、その分だけ重心距離が短い。彼は重心距離の違い(ヘッドの返り具合の違い)を本能的に察知し、クラブによってスイングを変えているわけです。恐らく、本人にトップのフェース向きの違いを質問しても「よく分かったね。そうだよ、クラブによってフェースの向きを変えているよ」なんて答えないでしょう。なぜなら本能的、無意識レベルで打ち分けているからです。

では遼クンのトップはどうなのか?

マスターズでのスイングを見る限りでは、フェースの向きはシャットではありませんでした。どちらかというとカブレラ同様、スクエアフェース。昔からの基本に忠実なトップを作っていますし、使っているドライバー(キャロウェイのレーザーフィットエクストリーム)も重心距離はそれほど長くありません。スイングとクラブの相性はマッチしています。

しかしながら、もし遼クンがドライバーの飛距離を更に伸ばしたいのであれば‥‥スコットのようなシャットフェースにした方がボクは良いと思っています。プレーオフで死闘を演じたカブレラスコットに比べると、遼クンの体つきは迫力あるとはいえません。筋肉量、骨格が全然違います。ゴルフは道具(クラブ)の依存度が高い競技です。今どきの重心距離が長いドライバーは、重心距離が短いドライバーと比較すると「飛び」に有利。遼クンも重心距離が長いドライバーを使った方が飛ばせる。体力差を補える。今どきの道具を味方につけるには、シャットフェースのトップが不可欠だからです。

もちろん、トップのフェース向きを変えることは用意ではありません。今はいろんな重心距離のドライバーを選べます。460CCでも重心距離が35ミリ前後のモノもあれば、460CCで重心距離が45ミリ前後のモノもある。しかし、10ミリ重心距離がことなると飛距離にして5~10ヤードぐらい差が出てくる場合があるのです。カブレラのようにエンジンがデカイならばどんな打ち方でも飛距離を稼げますが、遼クンのように体がとりわけ大きくないプレーヤーは、飛ぶ道具を使った方が体力差をカバーできるからです。

習うよりも慣れろではありませんが、欧米ツアーで戦っている選手の多くはクラブが変わると、クラブに合せてスイングをモデルチェンジしています。昔の小さいヘッドのドライバーを使う選手はほとんどいません。対して、国内ツアーを見てると、大型ヘッドではなくてヘッド体積が小さめ(重心距離が短め)のドライバーを好んで使うプロが少なからずいます。

道具が先か、スイングが先か

と聞かれたら、マーク金井「道具が先」だと即答します。歴史を振り返れば一目瞭然です。パーシモンとメタルの切り換え時、めざましい活躍をしたのは真っ先にメタルを使い始めたジャンボ尾崎です。ドライバーのヘッドが大型化した時、めざましい活躍をしたのは片山晋呉です。野球と違ってゴルフは道具で飛距離を稼げます。道具(クラブ)を味方につけることの優位性‥‥遼クンがこのことに気づくのか、それとも気づかないのか?
これからも遼クンの使用ドライバー、そしてスイングについて追いかけていきたいと思います。
んじゃ(▼▼)b

「アナライズからの宣伝」

マーク金井が、スイングとシャットフェースを覚えるために作った。「スーパーシャット君」もうすぐ発売します!ご期待ください


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