「マーク金井がシャフトを作る本当の理由 その1」←こちらから
どんなシャフトにリシャフトすれば、ゴルファーは飛んで曲がらないクラブを手に入れられるのか?
シャフトメーカーもボクも、これが「シャフト作り」のコンセプトになっていますが、メーカーさんとボクとでは立ち位置が大きくことなります。メーカーさんは数多く、そして効率良くシャフトを販売しなくてはなりません。このため、売れ筋商品を作ること、そして売りやすい商品を義務付けられています。言葉を変えれば「手離れ」が良いシャフトを作り、「手離れ」が悪いシャフトを作らない傾向があります。
このため、60g以上のシャフトの多くは軟らかい「R」フレックスのシャフトを作らないことが多いです。重めのシャフトは硬い方が売れる(売りやすい)。軟らかいのは売れない(売りづらい)と考えているからです。
対して、ボクはシャフト単体の性能よりも、ゴルファーのスイングに好影響が出るシャフトを作りたい。それが設計の「コンセプト」。そして売りづらくてもゴルファーの上達につながるシャフトは必要不可欠。メーカーさんが作りたがらないならば、「よっしゃ自分で作ってやろう」と思ったのです。
具体的に言うと、ウッド用、アイアン用とも重めで軟らかめのシャフトを設計しました。最初に作ったのはアイアン用。次にユーティリティ用ときて、昨年末にはFW用(ドライバーも使用可能)を作りました。硬さだけにこだわるのではなく、重量フローにもこだわり、
・アイアン用は75g
・ユーリティリティ用は70g
・FW用は65g
それぞれで重さを少しづつ変えているのは、クラブの長さがそれぞれ異なるからです。ウッド用よりもUT用が少し重く、UT用よりもアイアン用の方を少し重くする。これで重さと長さのバランスがマッチし、振りやすさが揃ってきます。
硬さについてはアイアン用は1種類。UTとFW用は2種類ラインアップしています。当初はすべて1種類だけの予定でしたが、試作で作った硬めのシャフトがすごく良かったので‥‥ハードヒッター用に(本当は自分用に)作っちゃいました(笑)
話を元に戻しましょう。ボクのシャフト作りのコンセプトはスイングが良くなることですが、そのためのポイントは重さ、硬さの他に調子があります。シャフトメーカーは、多くのユーザーに対応すべく手元調子、中調子、先調子とラインアップしています。でも、ボクは3つの調子を出すつもりは今のところありません。アナライズのオリジナルシャフトはすべて手元にしなるポイントがあり、いわゆる手元調子です。
手元調子にする理由は‥‥手元がしなった方が切り返しのタイミングが取りやすいこと、打ち急ぎのミスを減らせること、シャフトがタメを作ってくれること、そしてプレーンに沿ってクラブを下ろしやすくなることです。先調子のようにインパクトでヘッドが走る感じにはなりませんが、先端挙動が落ち着いているので入射角が安定すること、そしてミート率が良くなるメリットもあるんです。今市販しているオリジナルシャフトもミート率の良さには、かなり自信があります。
もちろん手元がしなりさえすれば良いわけではありません。全体の硬さに対して手元側をどれだけしならせるか。これが設計&開発の妙味。加えて‥‥
中間部分の硬さ
先端側の硬さ
シャフト全体をどれぐらいしなせるか
シャフトのしなり戻りのスピード感
どれぐらいねじれさせるか(トルク)
こういった所をどんな風に設計するでシャフトのキャラクターはガラッと替わります。設計段階では剛性分布の数値、材料をどう配分するかにこだわって試作。そして、試作シャフトを実際にコースにて試打してフィードバック。神田には24時間打てる室内試打スタジオがありますが、シャフトを最初にテストする時は、スタジオでは絶対に打ちません。1発目は必ずコースで打ちます。それもホームコースで。オリジナルシャフトについては、必ず千葉市民ゴルフ場で1発目を打っています。
練習場(試打スタジオ)とコースではゴルファーの気分、気合いが違うからです。これはゴルフの上手下手とはまったく関係ありません。ツアープロでも練習場とコースと比較すると、コースに出た時の方がヘッドスピードが0.5~1m/s上がります。ボクの場合、ヘッドスピードはほとんど変わりませんが、まったく同じ気分にはなりません。シャフトもクラブも試打は1発目が大事です。その1発目をリラックスして打てるシチュエーションではなく、緊張したシチュエーション場所で打ちたい。そうしないと本当の性能を吟味できないからです。だから試作シャフトは‥‥何が何でも1発目はコースなのです。
今回の試打ラウンドでは、58gのドライバー用のRシャフト、それと85gのアイアン用シャフトをテストしました。
58gの試作シャフトは自分がイメージしているよりも軟らかく、シャフト全体もしなり過ぎる感じなので‥‥早速修整をリクエスト。シャフトが動き過ぎるのを修整する方法はいくつかありますが、今回はもう少し弾き感を出すために、中間部分の剛性を少し上げること、トルクを少し絞ってほしいことを開発製造担当スタッフに伝えました。
ちなみに試作第1号のスペックは、こんな感じです。
長さ45.5インチ
ヘッド重量195g
クラブ重量310.2g
バランスD2
振動数 228cpm
センターフレックス 3.26kg
45インチに換算すると振動数は230cpmぐらいでしょう。これを235cpmぐらいまでにアップすること、そしてセンターフレックスを3.5くらいまで上げることをリクエストしました。
もちろん、シャフトの挙動(フィーリング)は数値だけで決まるものではありません。同じ数値に仕上げても材料、製法、そして剛性分布が異なれば、まったく違うフィーリングのシャフトになります。それが分かっているから、シャフト設計時には開発製造スタッフと入念にコミュニケーションが不可欠です。アナライズのオリジナルシャフトはコンポジットテクノさんで製造してもらってますが、わずかな修整も「なんでここまで分かるの」って感じで、新たな試作品が上がってきます。ボクのコミュニケーション力よりも、開発製造担当スタッフがボクの言葉の文脈、意図を汲取り、それを製品に反映させる能力が非常に優れているからなせる技です。
次回は、シャフトの調子、しなり感はどうやって設計していくのかについて、説明しましょう~。
んじゃ(▼▼)b