素人のゴルフとツアープロフェッショナルのゴルフ。どこが大きく違うのかと言えば、それはプレーする「環境」ではないだろうか。トーナメントでは1ホールの当たりの距離設定が長い。そしてフェアウェイが狭く、ラフが長い。グリーン面が硬く、芝生も短く刈られているために転がりが非常にいい。
だからこそ、ティショット(ドライバー、3w)ではなるべく遠くに飛ばしたい。セカンドでは硬いグリーンでも止まる高さが出せるハイボールが打てるロングアイアン(UT)が欲しい。そして、硬いグリーンでもスピンがギュギュっと入るボールやウェッジが欲しくなるわけである。環境が必要な道具を生み出している、といえる。
かつて(今も!?)、上記の願いを叶える道具は、アマチュア(素人)の欲しがるモノだった。僕らはプロみたいに遠くへ飛ばせないし、ロングアイアンで高い球を打つことができない。アプローチで強烈なバックスピンをかけられる技術も持っていなかった。だからこそ、“飛んで止まる”を叶える道具を欲し、その願いを叶えるべく主に日本のメーカーがその分野をリードしていった。日本のゴルフブランドはプロモデルとアマモデルの2本だてでクラブやボールを開発したのである。
しかし、90年代中盤以降、プロゴルフのコースセッティングがどんどんシビアになるにれて、プロがアマのような道具を望むようになった。もっと飛び、もっと止まるモノが欲しい。その結果、ゴルフ道具開発の方向性に、プロ・アマの区別がなくなってしまったわけである。米国メーカーも日本ブランドのアマチュア向けクラブみたいなものを作るようになったのだ。
今のプロは、昔のアマチュア向けとされていたゴルフクラブで大きな飛距離とミスに対する寛容性を手に入れているといっても言い過ぎではないと思う。飛ばすプレーヤーが増えるほど、イタチごっこのようにシビアに設定されていったプレーする「環境」が、プロの使用道具をどんどんアマチュアチックにしていったのである。
では、我々アマチュアのプレー環境はどうか。
総ヤーデージが7000ヤードを超えるほど長大なゴルフコースでプレーするだろうか?捕まれば出すだけとなる長いラフのコースでプレーするだろうか? 触っただけでグリーン外に出ていってしまうような高速グリーンでパッティングをするだろうか?
「環境」が必要道具を育むならば、実はアマチュア向けクラブはそこまで飛んだり、高く上がったり、スピンがかかったりしなくてもいいのではないか? そんなふうに最近は思うようになった。僕らはツアーで戦うわけではないのだから。
では、本当にアマチュアのゴルフに必要な道具とはなんだろうか?
それは……狙った方向に打ち出せるクラブなのではないか? 最近はそんなふうに思っている。我々のプレーをラクにしてくれるのは過度な飛びよりも、まずまずの方向性ではないだろうか。
(書き手/高梨祥明)
プレーする環境が必要とされるゴルフ道具を育む。マーク金井のYoutubeチャンネル「オルタナゴルフ」五島列島リンクス編 もぜひご覧ください。