カテゴリー: スイング、ゴルフ練習法
2013年05月01日ボディターンのウソ、ホント その1
昨日のブログで、練習場でボールをたくさん打つことのデメリットについて書きました。大事なことなので繰り返しますが、ボールを沢山打ってもスイングが改善される確率は非常に低いです。ボールを打つと、優先順位の1番目に来るのはボールの行方だからです。スイングを変えようと思って練習しても、ミスショットが3発も続けば、もうスイングのことなんて誰も考えられません。4発目、頭の中はナイスショットを打つこと、芯で当てたい欲に支配されていまします。初中級者はもちろんのこと、シングルハンデのゴルファー、そしてプロでもミスが続くと、ナイスショットが打ちたくなるからです。
正しいスイングを身に付けたい
スイングの悪癖を矯正したい
この2つのことを本当に考えているのであれば、ボールを打たないで練習した方が努力が報われます。練習したら、練習した分だけ上手くなれるのです。
素振りをする時は、ただ何となくクラブを振り回すよりも、合理的に体を動かしやすくなる練習器具を使うこと。マーク金井は素振りの時、ゴルフの竪琴を使っています。この竪琴のメリットは右手と左手の使い方の違いを感じとりやすいこと。そして、アマチュアに多い手打ちを解消するのにも効果が高いからです。
そこで今回は手打ちを矯正するドリルについて説明しましょう。手打ちは良くないことは皆さんもご存じだと思います。手先でクラブを操作すると軌道が不安定になります。加えて、体の大きな筋肉を使いづらくなる分だけヘッドスピードが思うように上がりません。プロでもアマチュアでもロングヒッターと呼ばれる人は例外なく体の大きな筋肉を使っています。対して、飛距離が出ないアマチュアほど手先だけでクラブを操作し、その結果、フォローで左ひじが曲がってしまったり、引けたりしています。
では、どうすれば手打ちのを解消できるのか?
マーク金井が初心者をレッスンする時、フォローで左ひじがグニャリと曲がっている人に最初に教えるのがこのドリル。4つのポジションを意識することで手先ではく、体の大きな筋肉を使うためには何をやればいいかを体感できるからです。
まず竪琴を持ってアドレスします。左手は下で、右手は上です。
アドレス
アドレスの形から左手をテークバック方向に動かし、その反動でヘッドを前に出します。お尻を右にスライドさせた時に左手をテークバック方向に動かし、右手とヘッドが左手の前に出るようにしましょう。この時、グリップは右太もも付近か、右太ももよりも少し右の位置をキープするようにします。このポジションでは互いの手首の内側が少し触れるように心がけて下さい。
第1ポジション~第2ポジション
ポジション2ではグリップは右太もも付近にじっとさせたまま、腰を左にスライドさせます。左にスライドさせる目安は、太もも1~1.5本ぐらい。股関節を左にスライド
させる時、左肩が浮き上がらないように心がけて下さい。第2ポジションでは、左肩は右肩よりも少し低くなっているのが好ましい形です。ここでは腕や手先でクラブが動いているかどうかチェックしましょう。
第3ポジション
ここが手打ちを矯正するための一番大事なポイント。頭を後ろに戻しながら、上半身を少し右に傾ける。上半身を右に傾けた時、その反作用でフォロー方向にクラブを動かす。シーソーのように頭とクラブヘッドが逆に動くように心がけましょう。頭と頭(クラブヘッド)が作用反作用の関係を築き上がって来れれば、ボールを打たなくても体を使ってインパクトを迎える動きをマスターできます。
第4ポジション
第3ポジションからフォロー、そしてフィニッシュの大きさを決める。この3から4については、形は表示に大事です。ここでも手先ではなく背中の筋肉や「猫の筋肉をフル動員させていきましょう。
このドリルは一番デリケートな部分であるフォローの形を最初に作ります。フォローの形は動きの中で作りづらい。ならばテークバックでフォローの形を先に作っちゃえということで、このドリルが出来ました。フォローの形を最初に作っておけば、インパクトゾーンで手先をあれこれ動かす必要がなくなるからです。そして、第2~第3のポジションに移る際は、手元の動きを最小限に、体の動き(頭を右に戻す動き)を最大限にするのです。
おーっと、締切りの時間が‥‥この続きは明日説明しましょう。
んじゃ(▼▼)b
PS.スイング作りに効果的なゴルフの竪琴。シャフトクロスのトップ、そしてテークバックでフェースが開くのも矯正できるスグレモノです~。
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2013年04月30日練習場でボールをたくさん打つことの弊害‥‥
寒くもなく、さりとて暑くもない。GWのこの時期はゴルフを楽しむのに最高の季節でしょう。コースはどこも大盛況ですし、練習場も多いにぎわい。都内の練習場は1時間以上の待ち時間がザラになっています。
神田にスタジオを構えるようになって9年目を迎えています。マーク金井は夜な夜な室内スタジオで練習していますが、ボールを打つ数は極端に少ないです。30分だと10球弱、1時間の練習でも20球ぐらいしか打ちません。ボールを沢山打つことと、ゴルフが上手くなることとは何ら関係ないと思っているからです。そして1球打つ毎にビデオでスイングチェックをしているから、1球打つのに時間が掛かってしまうのです。
そして誤解を恐れずに言えば、一定時間内にたくさんのボールを打つことは、ゴルファーを下手にしてしまう(下手を固める)危険性を大いにはらんでいます。ボールを沢山打つことと、正しいスイングを身に付けることとの間には、何の因果関係もありません。沢山打てばボールに当てるのが上手くなるだけで、スイングの形が良くなるとは限らないのです。
またアマチュアの多くは時間制打ち放題の場合、たくさん打った方が「お得」だと考えがちです。例えば1時間1000円だとすれば‥‥10球打てば1球あたりの単価は100円。100球打てば1球あたりの単価は10円まで下がります。1球あたりの単価を下げようと頑張ることはあっても、1球あたりの単価を上げようとする人は滅多にいません。練習場でも「オレは今日、1時間で250球打った」と自慢する人はいても、「オレは今日、1時間で20球しか打たなかった」と自慢する人には、未だお目にかかったことはありません。
他方、実際のゴルフ場でのプレーはどうでしょう? プレーフィーが1万円のコースでプレーした場合、100を叩く人は90を出すことを望み、90で回っている人は80を目指しているはず。ゴルフは打数をいかに少なくするかを競うもので、どんなゴルファーも例外なく、「上達=1球あたりの単価を上げる」ことを真剣に望み、それを実践しようとする。1球あたりの単価を下げることを(大叩きすることを)自慢する人はまずいません。
「上達したい」「ゴルフが上手くなりたい」と本気で考えているならば、練習と本番とで自分のやっていることが逆になるのは避けるべきです。逆なことを一生懸命続けるほど、「練習のための練習」になるし、「練習場シングル」にもなりかねないのです。ゴルフの目的が1球あたりの単価を下げること(打数を減らすこと)ならば、練習に置いても1球あたりの単価を下げることを意識すべきです。そうした方が、「練習で打てたショットが、コースで打てない」とか、「練習場では気楽に打てるのに、コースに出たらプレッシャーがかかって上手く打てない」などの問題を克服できます。また、1球当たりの単価を上げることを意識すれば、練習では何をすべきで、何をすべきでないかも分かってきます。
やるやらないは皆さんの自由ですが、例えば、1時間1000円の練習場で「1球だけ打って帰る」と言うのを一度でいいから試してみて下さい。1球1000円です。高いですよ~(笑)
ものすごく贅沢、ものすごく勿体ない練習ですが、1時間で200球打った時には絶対味わえないプレッシャーを確実に体験できます。人によってはコースに出た時よりも緊張するでしょう。「練習場は気楽に打てるのに‥‥」なんて言ってる人も、そんな軽口は絶対に叩けないはずです。
大事なことなので繰り返しますが、ゴルフの本質は「1球当たりの単価を上げること」。それがゴルフの本質ならば、練習でも「1球当たりの単価を上げる、(下げない)こと」はっきりと自覚し、そして実践すべきです。
もちろん、正しいスイングを身に付けるには質だけでなく量も必要です。でも、「練習量=たくさんボールを打つこと」ではありません。スイングを変えたいならば、スイングが変りやすい方法で練習をすること。具体的に言うと、ボールを打たないで正しい形を覚えた方がはるかに合理的だし、練習したら、練習した分だけ上手くなれるのです。
効果的な素振りはいくつかありますが、右手と左手の使い方の違いを感じながら素振りすること。マーク金井はゴルフの竪琴という練習器具を使って練習することが多いですが、これを使うと、右手と左手の役割、右手と左手の正しい位置関係を直感的に感じ取り、そして学ぶことができます。レッスン書などで「右手は上、左手は下」という表現がよく出てきますが、竪琴を使うと、これがどういう意味かすぐに分かります。
初中級者、特にスライスに悩むゴルファーの多くは、フォローで左ひじが引け、左ひじがくの字に曲がっていますが、これも竪琴を使って素振りすると短時間で矯正できます。左ひじが引けたり曲がったりするのは、インパクトゾーンで右手を使い過ぎているからです。右手を使いすぎるから左ひじが余ってしまい、左ひじが引けたり、曲がったりしてしまうのです。
インパクトゾーンで右手を使いすぎないためには、まずは右手を使わないでフォローが取れるようになること。それを体感するのに役立つのが、写真のハーフスイングのドリルです。ハーフスイングではトップでもフォローでも「右手が上」になっていることを意識する。これを体の動きととともにゆっくり、とにかくゆっくり行うことをやって下さい。フォローで右手が上になることを覚えないことには、実際にボールを打つ時に左ひじは伸びてこないのです。
練習場でボールを打つと練習した気になりますし、ナイスショットを打てば高揚感を味わえます。でも、残念なことにスイングが改善させる確率は非常に低い‥‥本当に上手くなりたいならば、上手くなれる方法で努力した方が、ボールをたくさん打つよりも努力が報われるのです。
んじゃ(▼▼)b
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2013年04月17日改めて思う‥‥ゴルフ雑誌を読んでも上手くならない理由とは!?
毎週火曜日は週刊ゴルフダイジェストと週刊パーゴルフが発売されます。第2と第4木曜日にはアルバ、そして月刊では月刊ゴルフダイジェスト、チョイス、ゴルフクラシック、ゴルフトゥディ、ワッグル、そして隔月刊でビジョン72とゴルフスタイル‥‥米国よりも日本の方が、ゴルフ雑誌の発刊数は圧倒的に多いです。
そして米国ゴルフダイジェストやゴルフマガジンに比べると‥‥国内のゴルフ雑誌はレッスン記事の比率が非常に多い。表紙には「100を切る○○」「速攻、これでスライスは直る」「バンカーショットはこれでベタピン」等々の見出しが所狭しと並んでいます。
さて、このゴルフ雑誌におけるレッスン記事の数々。プロや上級者の中には、「ゴルフ雑誌を読んで上手くなったら苦労しないよ」とか、「ゴルフは読んでも上手くならない」なんてことを言う人がいます。実際、ボクの回りでもゴルフ雑誌を一生懸命読んでいる人の何人かは、残念なスイングをしている人が少なからずいます。また、そういう人の多くは、「スタック&チルト」と「4スタンス理論」はどちらが自分に合っているののか? とか、「あのプロの理論は古い」とか「あの理論は俺には合わない」なんてことを口にしがちです。
そこで今回のテーマは、ゴルフ雑誌のレッスン記事の限界性について。
ゴルフ雑誌のレッスン記事は「正しいのか? 間違っているのか?」と、いろんな人から質問を受けます。この問いに関してマーク金井は、
「レッスン記事はすべて正しいでしょう」
と即答します。何もゴルフ雑誌からの執筆依頼を減らしたくないからヨイショしているわけではありません(笑)。レッスン記事に登場するプロが、わざと間違ったことを言うメリットは何もないじゃないですか。どんなテーマであっても、取材に応じるプロ達は真摯にテーマに取り組み、解決法をアドバイスしています。スライスの直し方しかり。バンカーショットの脱出法しかり。飛距離アップしかり‥‥誤解を恐れずに言えば、間違ったことをレッスンすることよりも、正しいことをちゃんとレッスンした方が簡単だからです。
では、なぜ多くのアマチュアはレッスン記事を読んでもいっこうに上手くならないのか?
それは雑誌記事という表現方法には限界があるからです。例えば、FWを上手く打つにはダウンスイングからインパクトゾーンにかけて、動きのキモは左右の手の使い方にあります。それを言葉にすることこんな感じです。
ダウンからインパクトにかけて、左手は体に近づいて、右手が飛球線方向へ出て行きます。この右手が飛球線方向(前に行く)感覚がないと、FWは上手く打てません。
FWが上手く打てる人にとっては、このフレーズはすんなり納得できますし、勘違いや誤解もありません。ところが、ところが‥‥FWを苦手にしているゴルファーにとっては、この言葉の意味を理解しても、日本語をちゃんと理解しても、動きとして明確に頭にイメージすることが極めて難しいのです。
それは何故か?
例えば、動物の絵を描くことをイメージして下さい、ゾウを一度でも見たことがあるならば、「耳が巨大で、鼻がものすごく長い」と説明されたら、それだけでちゃんとゾウが描けますよね。上手下手の違いはあっても、実際のゾウと似た絵になるはずです。ところがゾウを一度も見たことがない人ならばどうでしょうか。いきなり「耳が巨大で、鼻がものすごく長い」という説明だけでは、ゾウは描けません。と言うよりは想像すらつかないでしょう。頭の中にゾウのイメージが描けない人にとっては、この説明から具体的な全体像が見えてこないからです。もし、この説明だけで実際のゾウを描ける人がいたならば、その人は正真正銘の天才でしょう。
ゴルフのレッスンもこれと同じなんです。前述した左右の手の使い方についても、すでに動きを理解してできる人にとっては「的を射たレッスン」ですが、動きを理解していない(実際にそう動けない)人にとっては、雲をつかむような言葉なんです。そして、大抵の人は言葉の意味を誤解し、本来の動きとはかけ離れた動きをしがち。アナライズには、年間1000人以上のアマチュアが来られますが、スイングがちゃんとできていない人ほど、ゴルフ雑誌のアドバイスを曲解、誤解した状態に陥っているのです。
では、どうすればゴルフ雑誌の記事を役立てることができるのか?
まずは雑誌の記事、雑誌の表現には限界性があることを理解することです。そして、アドバイスを勘違いしないためには、実際にレッスンを受けることです。直接プロからアドバイスを受ければ、曲解、誤解を防げます。実際にレッスンを受けることができないならば、客観的に自分をチェックすること。iPhoneやスマホなどでスイング動画を撮り、アドバイス通りに体が動いているかどうかチェックして下さい。ゴルフ雑誌の記事通りのことをやっているのに、実際の動きが間違っている場合は、そのほとんどはレッスン内容を曲解、誤解しています。
もうひとつの方法は練習器具を積極的に使うことです。アナライズではスイング作りにゴルフの竪琴を推奨しています。竪琴は左右の手を3次元的に離して持つことができます。これにより、前述した左右の手の使い方を勘違いしないで会得できます。もちろん、竪琴を使って練習する場合も動画チェックは必要不可欠です。
ゴルフ雑誌のレッスン記事を読んでも上手くならない‥‥これはゴルファーの理解力に問題があるわけではないと、ボクは思っています。人間は見たこともない、経験したこともないことを‥‥言葉だけでは理解することが出来ない生き物なんです。人間の想像力は無限ですが、ことゴルフスイングの会得においては、その想像力がデメリット方向に働くことが多いような気がします。
んじゃ(▼▼)b
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2013年04月15日改めて思う‥‥日本人がマスターズに勝つための条件とは!?
2013年のマスターズトーナメントは、アダム・スコットが豪州勢としては初の優勝で幕を閉じました。雨の中、アンヘル・カブレラとのプレーオフは死闘とも呼べるもので、手に汗をかきながら、息を詰めながらテレビ観戦した人も多かったかと思います。
GDOより転載
もちろんボクも朝5時ぐらいからテレビ観戦してました。タイガーの追い上げを期待していたのですが、パットがことごとく打ち切れない。本人もラウンド後にコメントしてましたが、オーガスタの超高速グリーンは雨が降ると途端に遅くなります。その遅さに対応できなかったことを本人は悔やんでいました。アダム・スコットも本戦中はパットが打ち切れてませんでしたが、本戦18番のバーディパット、そしてプレーオフで勝利を決めたパットも下りのラインでした。強めに打てなかったアダム・スコットに対して、ゴルフの神様は彼に少し味方したのかも知れません。
日本勢では石川遼が最終日に7つのバーディーを奪って、4アンダーの68を出しました。優勝争いに関係ない場面、ノープレッシャーのラウンドとはいえ、スコアはスコア。数字は数字。遼クンにとって自信初めての60台のスコア。この数字はきっとこれからのゴルフの支えになるでしょう。対して、4位タイに終わったタイガーは2日目に池ポチャ処理を誤っての2打罰があったとはいえ、4日間とも70以上のスコア。「最終日に65を出せば優勝できると」コメントを残していましたが、まさにその通りの結果になりました。
GDOより転載
今年もマスターズはTV視聴者に色んなシーンを見せてくれましたが、ボクが注目したのは最終18番のティショット。カメラがティマーク付近にあるのでしょう。世界のトッププロ達のスイングを下からあおり気味に、これでもかって見せつけてくれました。そして、その連続写真的なスイングを見てみると‥‥プレーオフを戦ったアダム・スコットとアンヘル・カブレラとの間には年齢以上、スイングの世代間ギャップを感じました。
その差は11歳ですが、カブレラは「パーシモンでゴルフを覚えた」かのようなスイングの持ち主。対して、スコットは「460CCチタンでゴルフを覚えた」かのようなスイングをしていたからです。
どこがどう違うのか?
それはトップの位置です。カブレラはトップでフェースがスクエアからややオープン。トップの位置でフェース面は斜め45度から正面の間ぐらいです。フェースがスクエアかオープンなトップは、パーシモンのように重心距離が短いクラブと相性が非常に良く、そしてフェースを開閉して打った方が飛びますし、方向性も安定します。かれのトップはボクがゴルフを始めた頃(30年以上前)、最高のお手本でした。
対してスコットはトップでフェースがシャット。宮里藍ちゃん同様、トップでフェースが空を指しています。シャットフェースなスイングは重心距離が長いドライバー(大型ヘッド)と相性が非常に良く、そしてフェースをシャットに使った方が飛びますし、方向性も安定します。30年前だとシャットフェースは悪いスイングと評価されていましたが、重心距離が長いクラブが当たり前な今では、これが最高のお手本です。
このトップのフェース向きの違いは持ち球の違いにもあります。カブレラはピンの大型ヘッドを使っていますが、ドライバーの弾道は基本フェード。ピンの大型ヘッドは重心距離が長い。オープンフェースだとボールを捕まえたり、ドローを打つのが難しくなります。カブレラはそれを本能的に察知したのでしょう。彼は捕まらないドライバーを無理に捕まえようとせず、フェードを打っています。プレーオフの2ホールは10番ホール。ここはほぼ直角ってぐらい左にドッグレッグしていて、ドライバーの弾道がフェードだと攻略ルートが非常に狭くなる。彼はドライバーや3Wでフェードを打つと攻めきれないとジャッジし、ロングアイアンでティショットを打ちました。
対して、フェースをシャットに使うスコットは3Wでティショットを打ってフェアウェイをキープ。ちなみにスコットの場合、ドライバーに比べると、3Wやアイアンを打つ時はシャットの度合いが少し弱まっています。ドライバーに比べると3Wはアイアンはヘッドが小さく、その分だけ重心距離が短い。彼は重心距離の違い(ヘッドの返り具合の違い)を本能的に察知し、クラブによってスイングを変えているわけです。恐らく、本人にトップのフェース向きの違いを質問しても「よく分かったね。そうだよ、クラブによってフェースの向きを変えているよ」なんて答えないでしょう。なぜなら本能的、無意識レベルで打ち分けているからです。
では遼クンのトップはどうなのか?
マスターズでのスイングを見る限りでは、フェースの向きはシャットではありませんでした。どちらかというとカブレラ同様、スクエアフェース。昔からの基本に忠実なトップを作っていますし、使っているドライバー(キャロウェイのレーザーフィットエクストリーム)も重心距離はそれほど長くありません。スイングとクラブの相性はマッチしています。
しかしながら、もし遼クンがドライバーの飛距離を更に伸ばしたいのであれば‥‥スコットのようなシャットフェースにした方がボクは良いと思っています。プレーオフで死闘を演じたカブレラとスコットに比べると、遼クンの体つきは迫力あるとはいえません。筋肉量、骨格が全然違います。ゴルフは道具(クラブ)の依存度が高い競技です。今どきの重心距離が長いドライバーは、重心距離が短いドライバーと比較すると「飛び」に有利。遼クンも重心距離が長いドライバーを使った方が飛ばせる。体力差を補える。今どきの道具を味方につけるには、シャットフェースのトップが不可欠だからです。
もちろん、トップのフェース向きを変えることは用意ではありません。今はいろんな重心距離のドライバーを選べます。460CCでも重心距離が35ミリ前後のモノもあれば、460CCで重心距離が45ミリ前後のモノもある。しかし、10ミリ重心距離がことなると飛距離にして5~10ヤードぐらい差が出てくる場合があるのです。カブレラのようにエンジンがデカイならばどんな打ち方でも飛距離を稼げますが、遼クンのように体がとりわけ大きくないプレーヤーは、飛ぶ道具を使った方が体力差をカバーできるからです。
習うよりも慣れろではありませんが、欧米ツアーで戦っている選手の多くはクラブが変わると、クラブに合せてスイングをモデルチェンジしています。昔の小さいヘッドのドライバーを使う選手はほとんどいません。対して、国内ツアーを見てると、大型ヘッドではなくてヘッド体積が小さめ(重心距離が短め)のドライバーを好んで使うプロが少なからずいます。
道具が先か、スイングが先か
と聞かれたら、マーク金井は「道具が先」だと即答します。歴史を振り返れば一目瞭然です。パーシモンとメタルの切り換え時、めざましい活躍をしたのは真っ先にメタルを使い始めたジャンボ尾崎です。ドライバーのヘッドが大型化した時、めざましい活躍をしたのは片山晋呉です。野球と違ってゴルフは道具で飛距離を稼げます。道具(クラブ)を味方につけることの優位性‥‥遼クンがこのことに気づくのか、それとも気づかないのか?
これからも遼クンの使用ドライバー、そしてスイングについて追いかけていきたいと思います。
んじゃ(▼▼)b
「アナライズからの宣伝」
マーク金井が、スイングとシャットフェースを覚えるために作った。「スーパーシャット君」もうすぐ発売します!ご期待ください
2013年04月13日マスターズでの石川遼の名言‥‥
米男子ツアーのメジャー開幕戦となるマスターズ。今日は予選ラウンド2日目。昨年までは44位タイまでが予選通過でしたが、今年は50位タイまでになりました(トップから10ストローク以内は継続)初日1アンダーだった石川遼は2日目にスコアを落としながらも、何とか予選通過しました。その遼クンの初日終了後のコメントで目に止まったのがこれです。
「調子が悪くなった時も、絶対に前の感覚を思い出そうとするのは嫌なんです。そう思った時点で後戻りになるからです」
「これだっ」という感覚を掴むと、アマチュアのみならずプロでも「いい時の感覚」というのがスイングのよりどころになります。例えば、○○のような感じでスイングしたら上手くいくと、その○○を自分のスイングのバロメーターにしたり、その○○をナイスショットと関連付けたくなります。
しかし、感覚というのはまったくもって当てになりません。身体は日々変化します。感性や体調も日々変化します。練習でどんなに良い感覚が得たとしても、その感覚が役立つのはその日限り。持続したとしてもせいぜい数日でしょう。例えば、トップからダウンの切り返しで右ひじを真下に下げたら、スイングプレーンに乗って良い球が打てた。動画でチェックしてもスイング軌道が良かったとしましょう。こうなると「右ひじを真下に下ろす=ナイスショット」の感覚図式が出来上がりますが、これは永久保存できる感覚ではありません。その時限りの成功体験の感覚なんです。
ところがアマチュアのみならず、ツアープロでも調子が悪くなると、調子が良かった時の感覚をよりどころにする場合が少なからずあるのです。しかし昔の感覚はどんなに素晴らしものであっても、それを求めるほどに後戻りすることになるのです。今シーズンの遼クンは思うような結果が出てませんが、こんなセリフをマスターズの大舞台でサラッと言えてしまう。これだけでも、彼が並の選手ではないことが明かです。
その一方で名前は出せませんが、昔の感覚を戻そうとして練習したり、昔のクラブに戻して復調を試みるプロもいます。しかし、そういうことをやって見事にカムバックした選手はほとんどいません。クラブに関してはパターやウエッジは昔に戻してもスイングに影響は出ませんが、ドライバーやアイアンは昔に戻しても前の感覚は思い出せないからです。
では、感覚は役にたたないのか?
遼クンの言葉を思い出して下さい。前の感覚を思い出そうとするのがダメであって、感覚そのものを否定しているわけではありません。練習で大事なことは昔を思い出そうとするのではなく、これからやるべき事に対して感覚を磨くこと。そのためには、調子が悪い時は、何が不調の原因なのかを客観的にチェックすることが必要不可欠です。スイングのどこが悪いのか? フォームなのかリズム&テンポなのか? それともアドレス時の体の向きなのか? これらをチェックするには感覚ではなく、自分のスイングを客観的にチェックすること。ビデオやデジカメ、iPhone‥‥とにかくスイングを客観的に丸裸にしてしまい、どこをどう修整していくのかを決めることです。感覚に頼るのではなく、とにかくスイングをじっくりチェックする。そうすると、自分がどこに勘違いしていたのかがかなり正確にジャッジできますし、スイング修整の糸口も見えてくるのです。
もちろんスイングを正しくジャッジするためには、スイングを見る目も養うことも必要不可欠です。いいスイングと悪いスイングの違いが分からなければ‥‥スイングの問題点を見つけ出すことはできません。問題点が見つからなければ、どこを修整すれば良いのかも分からないからです。
昔の良かった時の感覚、これはいわば「成功体験に縛られる」ことになります。ゴルフに限りませんが、成功体験に縛られるのは非常に危険です。おちまさとさんもブログで、
何かに挑む時
何か新たな展開をする時
つい
「あの時
ああやって成功したのだから
“また”あの成功パターンに
はめ込めば大丈夫だろう」
と思ってしまうことが
ありがちなのではないだろうか。
これはとても危険なサイン
(おちまさとブログから引用)
http://ameblo.jp/ochimasato/entry-11143298704.html
書かれています。ボクもまったく同感です。ゴルフ上達に必要なのは、ビデオでのスイングチェック、そしてひざ立ち打ちや、ゴルフの竪琴などを使って、日々感覚を磨くことが大事だと思います~。
んじゃ(▼▼)b
マーク金井がいつも練習に使用している「ゴルフの竪琴」はこちらへ