、「いいスイング」とは形や型です。そして、ここで言う形や型というのは、体をどれだけ回したかとか、軸がしっかりしているかとかだけでなく、クラブを正しいポジションに収めることです。歌舞伎や日本舞踊に例えるならば、腰の曲げ具合と同じぐらい扇子の位置が大事です。テークバックやトップ、ダウンスイングやインパクトでクラブのポジションが正しいことが‥‥オンプレーンの正しい軌道(動き)につながるからです。
そして、いいスイングを身に付ける上で欠かせないのが体の「剛性感」。「剛性感」と言ってもピンとこないかと思いますが、要するに、体を硬く(正確には緩ませない状態)使うことを覚えることです。誤解を恐れずに言えば、変にリラックスして打とうとするぐらいならば、わざと力んで体をカチカチに使った方が、ボクはいいと思っています。
リラックスを否定する理由‥‥
それは多くのアマチュアはリラックスと「緩み」を混同し、体を緩ませ過ぎて失敗しているからです。体が緩みすぎると正しい姿勢は作れませんし、スイング中においては正しい形、型を作ることはできません。演出家の鴻上尚史さんもおっしゃってますが、多くの人は「リラックス」というと‥‥サウナの中に入って体をグニャっと緩めた状態をイメージしがち。結果、体に剛性感がまったくありません。筋肉が緩みすぎるために、トップで左ひじがぐにゃりと曲がったり、フィニッシュが弱々しくなっています。そしてパワーも出し切れてません。
力み過ぎることと同じぐらい、力が抜け過ぎるのはスイングに良くないのです。
まずは騙されたと思って、力をしっかり入れてスイングしてみて下さい。大きく振り回す必要はありません。ハーフスイングでいいです。クラブのポジションを意識しながら、1スイング3秒。普段よりも3倍時間をかけてひとつのスイングをする。
そして、このゆったりスイングのポイントは力加減を変えないこと。アドレス、テークバック、トップ、ダウンスイング、インパクト、フォロー、そしてフィニッシュ。アドレスで体に力を込めたら、その力加減をずっとキープしたまま、ゆっくりスイングするのです。
言葉にすると簡単に思うかも知れませんが、実際、やってみると分かります。力加減を変えないように打つことの難しさ。そして、力をしっかり入れておいた方が、体が緩まないことが体感できます。トップで左ひじが曲がる人でも、力をギューッと入れたままならば左ひじが伸びてきます。実際、初心者の場合、力を緩めないことを教えることで、緩みのないトップを作れるようになります。短時間で……
1000人以上のアマチュアのスイングを観察してますが、力んで失敗する人よりも、緩んで失敗している人の方が圧倒的に多いです。そして、力んでスイングしている人の大半も、スイングのどこかで瞬間的に力んでいるだけ。アドレスからフィニッシュまで力み続けている人は100人に1人もいません。
ゴルフは、特にキャリアが長い人ほど、自分の感覚、常識に囚われるほど堂々巡りに陥ります。上達するには、自分の感覚、常識からいかに外れるかも大事なんです。