長引くデフレの影響でしょう。都心の練習場を覗けば、多くの練習場は時間制打ち放題が当たり前。例えば、1時間1500円とか、2時間2500円という風に……。時間制ならばボール数に制限がありません。1時間に50球打っても200球打っても同じ料金。1球何円という練習場よりもお得感があるので、多くのゴルファーから支持されています。
しかしながら、もし本当に「ゴルフが上手くなりたい」「いいスイングを身に付けたい」と思うならば、打ち放題の練習場に行くのは得策ではありません。誤解を承知で言えば、一定時間内にたくさんのボールを打つことは、ゴルファーを下手にしてしまう(下手を固める)危険性を大いにはらんでいます。ボールを沢山打つことと、正しいスイングを身に付けることとの間には、何の因果関係もないからです(これについて次回詳しく説明します)。
そしてもうひとつの理由、それは「時間制打ち放題」の練習を重ねるゴルファーほど、「ゴルフの本質」を見失うことになるからです。
時間制打ち放題の場合、多くのゴルファーはたくさん打った方が「お得」だと考えがち。1時間1000円だとすれば……10球打てば1球あたりの単価は100円。100球打てば1球あたりの単価は10円まで下がります。1球あたりの単価を下げようと頑張ることはあっても、1球あたりの単価を上げようとする人は滅多にいません。練習場でも「オレは今日、1時間で250球打った」と自慢する人はいても、「オレは今日、1時間で20球しか打たなかった」と自慢する人には、未だお目にかかったことはありません。
他方、実際のゴルフ場でのプレーはどうでしょう? プレーフィが1万円のコースでプレーした場合、100を叩く人は90を出すことを望み、90で回っている人は80を目指しているはず。ゴルフは打数をいかに少なくするかを競うもので、どんなゴルファーも例外なく、「上達=1球あたりの単価を上げる」ことを真剣に望み、それを実践しようとする。1球あたりの単価を下げることを(大叩きすることを)自慢する人はまずいません。
察しのいい人はもうお分かりでしょう。そうです、「上達したい」「ゴルフが上手くなりたい」と本気で考えているならば、練習と本番とで自分のやっていることが逆になるのは避けるべき。逆なことを続けるほど、「練習のための練習」になるし、「練習場シングル」にもなりやすい。ゴルフの目的が1球あたりの単価を下げること(打数を減らすこと)ならば、練習においても1球あたりの単価を下げることを意識すべきです。そうした方が、「練習で打てたショットが、コースで打てない」とか、「練習場では気楽に打てるのに、コースに出たらプレッシャーがかかって上手く打てない」などの問題を克服できます。また、1球当たりの単価を上げることを意識すれば、練習では何をすべきで、何をすべきでないかも分かってきます。
やるやらないは皆さんの自由ですが、例えば、1時間1000円の練習場で「1球だけ打って帰る」と言うのを一度でいいから試してみて下さい。1球1000円です。高いですよ~(笑)。ものすごく贅沢、ものすごく勿体ない練習ですが、1時間で200球打った時には絶対味わえないプレッシャーを体験できます。人によってはコースに出た時よりも緊張するかも知れません。「練習場は気楽に打てるのに……」なんて言ってる人も、そんな軽口は絶対に叩けないはずです。
大事なことなので繰り返しますが、ゴルフの本質は「1球当たりの単価を上げること」。それがゴルフの本質ならば、練習でも「1球当たりの単価を上げる(下げない)こと」をはっきりと自覚し、そして実践すべきです。
もちろん、正しいスイングを身に付けるには質だけでなく量も必要です。でも、「練習量=たくさんボールを打つこと」ではありません。1球当たりの単価を下げないで、練習量を増やす方法は、素振りです。「素振りの重要性」コチラをご覧ください